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2018.05.07
美術鑑賞をより楽しむために欠かせないアイテム、それが単眼鏡です。
近年人気が高まっている刀剣鑑賞でも単眼鏡は力を発揮します。
刀剣鑑賞を楽しむためのポイントは3つ。この3つのポイントを肉眼、そして単眼鏡を通して観ることで初めて、刀剣の奥深い世界に触れることが可能になります。
1つめのポイントは、むだのない洗練された「姿(すがた)」。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
日本刀の姿(すがた)には様々な特徴があります。
刀身が長いもの、短いもの。反りが大きいもの、小さいもの。
それらは、その日本刀が生まれた時代や作り手の個性、文化が影響しています。
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
姿(すがた)を鑑賞することは「刀を知る」第一歩です。 肉眼で、視界に刀全体が入るくらいの距離で鑑賞しましょう。
津田越前守助廣
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
また日本刀は各部分ごとに特有の名称があり、独特な言葉が使われています。
次のポイントは鍛え込まれ深く青々とした「地鉄」です。
津田越前守助廣
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
日本刀は「折れず、曲がらず・よく切れる」という条件を満たすために、折返し鍛錬を行います。
その際、刀身の表面に美しい文様が現われ、この鉄の肌模様が現れた場所を地鉄と呼びます。 単眼鏡で地鉄をじっくり観察すると、細かく美しい地肌がみえてきます。
縦方向へまっすぐに目の通った柾目(まさめ)肌とよばれるもの、木の年輪が流れたようにみえる板目(いため)肌、板目肌よりさらに節が丸く目立ってみえる杢目(もくめ)肌といったものが代表的なものですが、中には交互に波打つように規則的に文様が繰り返される綾杉(あやすぎ)肌と呼ばれるものなどもあります。
最後のポイントは「刃文」です。 刃文とは、焼き入れによって生ずる、星のように煌く模様のことです。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
焼刃土(やきばつち)をへらを用いて、刃として固くしたい部分には薄く、他の部分には厚く塗ることで、その境目が直線的な直刃(すぐは)になったり、乱刃(みだれば)になったりと、様々な刃文が生まれます。
ふわっと浮き上がるように見える刃文を単眼鏡を使って視点を変えながら鑑賞しましょう。
刀身に命を吹き込む焼入れによってできる刃文。流派や刀工、その時代の特徴が表現されており、刃文を覚えると刀剣鑑賞がより楽しくなります。
焼入れの工程で、刃と地鉄の部分の硬度に差ができる際に刃文ができ、その刃文は「沸と匂」によって形作られています。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
沸は粒子が荒く、単眼鏡で鑑賞すると、キラキラと輝く粒子が刃文に見えます。単眼鏡の角度を変えると粒子の粒が星のように瞬きます。
匂は拡大鏡などで見ないとわからないくらいの細かな粒子でできています。単眼鏡を使って鑑賞すると、ぼうっと霞んだ天の川のようにみえます。
今回、刀剣博物館で特別に刀剣を鑑賞させて頂きました。
刀剣博物館
日本刀の文化や制作技術の保存継承を目的として開館した博物館。 日本のみならず世界に日本刀を発信していく拠点となるベく、様々な活動を展開しています。 刀剣類、刀装、刀装具、甲胃、 金工資料、古伝書等を多数所蔵し、その中には国の指定・認定物件も数多く含まれています。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
一振り目は、鎌倉時代に制作された(金象嵌銘)助真。
丁子乱れの文様が華やかで美しい刀剣です。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
小板目肌できめ細かく、澄んだ地鉄をしています。
(金象嵌銘)助真
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
単眼鏡で覗いてみると、出入りの激しい丁子乱れの刃文がリズミカルで美しく、地鉄の板目肌にやわらかな杢目が浮き出ているのが分かります。
津田越前守助廣
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
二振り目は、江戸時代前期に制作された津田越前守助廣。
津田越前守助廣
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
打ち寄せる波を思わせるなだらかな濤瀾(とうらん)は、光を反射させる角度で見ると浮き出すように見え、美しさが増しています。
津田越前守助廣
資料提供:公益財団法人 日本美術刀剣保存協会
刀剣は世界に誇れる鉄の総合芸術品です。むだのない洗練された「姿」、深く青々とした「地鉄」、星のように煌く「刃文」の美の鍛え込まれた美しさ。
単眼鏡を使った刀剣鑑賞はこの3つのポイントを理解するだけでグッと広がります。
美術鑑賞をより楽しむために欠かせないアイテム。それが単眼鏡です。単眼鏡で美術作品を鑑賞する最大のメリットは、絵画や工芸の精緻な表現を拡大して見ることができること。肉眼では見えない美術品の細部に宿る美しさを堪能できます。
刀剣の奥深い世界をじっくりストレスなく楽しむには、手ブレの少なさと視界の明るさを重視して、4倍の単眼鏡がオススメです。