ビクセン | 天体望遠鏡、双眼鏡を取り扱う総合光学機器メーカー
ビクセンの取り組み・コミュニティ
2022.02.22
みなさまからご応募いただいた約1,400点の作品の中から入賞作品を選出いたしました。
厳正な審査会を経て、グランプリと各賞が決定いたしました。
ビクセン主催
第2回「それぞれの宙を見上げて」星空フォトコンテスト2021
審査員の紹介
大西 浩次氏
博士(理学)。日本星景写真協会理事、国際天文学連合(IAU)会員、日本天文学会、日本天文教育普及研究会ほか。第4回淵行男賞入賞。研究分野は重力レンズと系外惑星探査。地球と宇宙と人のつながりをテーマに星景写真を撮影。毎日小学生新聞「ガリレオ博士の天体観測図鑑」隔週土曜連載中。
北山 輝泰氏
プロカメラマン。日本大学芸術学部写真学科卒業。天体望遠鏡メーカーで営業として勤務後、星景写真家として独立。天文雑誌のライターをしながら、全国で写真講師の仕事を行う。星景写真を始めとした夜の被写体の撮影について、座学・実習を通し学べる「ナイトフォトツアーズ」を運営中。
大西浩次氏による総評
2021年のビクセン・フォトコンテストの審査で全応募の作品を見て思うのですが、応募されているみなさんそれぞれの「宙(そら)を見上げる時の想い」がひしひしと伝わってきて、このような素晴らしい作品を応募いただいた皆さんに感謝したいと思います。ここで審査に当たって、コンテストの趣旨である「宙(そら)を見上げる時の想い」に合致すると同時に、作者の「宙(そら)を見上げる時の想い」を伝える技術と対象、そうして瞬間が揃った作品を中心に選んでゆくことになりました。
ところで、応募作品を見ると、3月や11月など、特定の期間の作品に集中していました。全国的には、ちょうど、新型コロナウイルス感染症の感染者が減少した時期に当たります。それは、きっと、新型コロナウイルスの影響で、星を見る機会も減少したためなのでしょう。それでも、自宅の近くから見上げる星や、窓に差し込む日の光や月明かりなど、身近な所からでも「宙(そら)」との繋がりを持ち続けたいものです。新型コロナウイルスの影響で、応募数は減ってしまいましたが、平均的なレベルは高く、審査は難航しました。
私たちは、自宅や身近な場所からふと見上げたような素朴な星空の写真も重視して審査したのですが、競争のなかで、結果として、遠征時の撮影や風光明媚な場所での作品が選ばれる事がありました。しかし、入選の基準が作者の宙(そら)を見上げる時の「想いの強弱」ではないことをご理解いただきたいと思います。個人的には、星空を見上げる原点を感じるような素朴な写真も期待しています。このような審査の中で選ばれた作品は、貴重な天体現象を共に共有できた人たちの作品となりました。まだしばらく、新型コロナウイルスの影響で、気楽に星を見に行ったりすることが出来にくい状況が続くかもしれません。しかし、まさにそんな時代だからこそ、「宙(そら)を見上げる時の想い」を大切にしたいものです。
北山輝泰氏による総評
「それぞれの宙を見上げて」フォトコンテストにご応募いただきありがとうございました。1,000点を超える応募作品はどれも力作揃いで非常に難しい審査でしたが、星空が好きなみなさまの想いが作品を通じて伝わり、心が熱くなりました。
今回のフォトコンテストの傾向としては、一昨年のネオワイズ彗星のような話題となる天文イベントがあまりなかったこともあり、シンプルな星景作品が多かった印象です。そのため、「露出」「色味」「構図」といった写真の地力が改めて試されるコンテストとなりました。入選となった作品は、その地力に加え、作者の創意工夫や強運を味方につけた作品を中心に選ばせていただきました。
近年はソフトウェアの進化で星空や天の川をよりアーティスティックに表現することも簡単になりました。もちろんそのような作品も魅力的ではありますが、シンプルに誰が見ても美しい「情景」を捉えた作品が少なくなってきたようにも感じます。目の前の自然風景や構造物に目をやれば、まだまだ新しい発見があるはずです。また、最も身近な天体である「月」や、場所問わず楽しめる「惑星」や「一等星」もまだまだ主役になりうるはずです。次回フォトコンが開催されましたら、ぜひそのような作品もたくさん拝見できればと思っています。
最後に、本フォトコンテストの運営にご尽力いただいているスタッフのみなさま、そしてご応募くださったみなさま、本当にありがとうございました。
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※写真の情報は応募者にご記入いただいた内容を元に記載しています。
グランプリ「神秘を感じた数秒間」
大西浩次氏によるコメント
この星に生まれてこの大火球を撮影できた幸運を祝福したい。2021年3月14日、好天の日曜日の未明、関東地方で未明の空を見上げていた人が、この大火球を目撃できたのです。写真は、富士五湖(精進湖)の湖畔からボートと一緒に富士山の上に昇る天の川を撮影していた時のものです。定番の構図なのですが、この大火球が画面を斜めに横切ることで、画面に緊張感が満ち、火球の湖面の反映が色彩的にも美しく、素晴らしい写真となりました。「宙(そら)を見上げる時の想い」が天に通じて、今年のグランプリにふさわしい写真となりました。
北山輝泰氏によるコメント
2021年3月14日の大火球を捉えたものです。世の中でもニュースとして取り扱われたため、ご存知の方も多いのではないでしょうか。その1年に一度あるかないかの大火球を幸運にも写真に収めることができたのは、作者の行動力の賜物だと言えます。地平から顔を出した天の川銀河を裂くように流れる迫力のある写り方とは対照的に、湖面に並んだ手漕ぎボートが夜の静寂さを演出しています。日頃から星空と向き合うことで、このような奇跡をものにできるということ。そして、星景写真を撮影することの根本的な面白さを改めて教えてくれた素晴らしい作品です。
特選「月傘」
北山輝泰氏によるコメント
北海道の白雲岳のテント場で撮影された1枚です。山岳をテーマに撮影された作品のご応募は多数ありましたが、明るい月を逆光で捉え、暈(かさ)を主役にした意外性に惹かれました。その月に照らされるテント場を魚眼レンズで広く切り取ったのも面白く、また人物を配置したことで、構図の良いアクセントになっているのも良い点でしょう。あともう一歩人物に近寄り、奥の避難小屋と被らない位置にカメラを構えることができれば、より臨場感ある作品になったでしょう。
特選「部分月食と渡り鳥」
大西浩次氏によるコメント
夕方の明るい時間帯に、欠けて昇ってくる月の前をねぐら入りのマガンの群れが横切ってゆく瞬間を望遠レンズと高速シャッターで切り取った写真である。2021年11月19日のほとんど皆既月食に近い部分月食は、新型コロナウイルス感染症の第5波が収束し、宙(そら)を見上げる気持ちのゆとりが出てきたときだったのでしょう、多数の応募がありました。食分が最も深い時間帯での月の高度が10度から20度くらいなので、如何に地上風景と組み合わせるかが勝負でした。一方、地上の風景と月のサイズのバランスは意外と難しく、なかなか肉眼で見た感じには写ってくれません。この写真では、この目で見る印象を写真にしたかったのでしょう、まさに昇り始めた月と水鳥(マガン)の群れの羽ばたきの様子を同時に写すために、残照の強い状態で撮影しています。また、選んだ撮影地も、宮城県北部のラムサール条約湿地に登録されている伊豆沼周辺に選ぶことで、偶然ではないシャッターチャンスを作り出しているのです。構想の勝負というべき写真です。一方で、画面中央にオランダ風車がある構図では、せっかくの月食への視線を弱めてしまったようだ。対象への視線を写真上でどのように持って行くかを配慮するとさらに素晴らしい写真になるだろう。
準特選「惑星探索」
大西浩次氏によるコメント
個人的に一番気に入った星景写真である。雪原を大きく取り、その向こうの星空を上部3分の1にした構図が星空への距離感を表現している。星座を大胆に切って、火星も含めて4つの1等星が輝き、オリオン大星雲が雪面に沈む直前、そうして自撮りだろうか、手を挙げて空を見上げている人のシルエットなど、実に想像力が掻き立てられる写真になっている。惜しむらくば、遠方のLEDライトの影響だろうか、空の色が濁っていること、雪原の雪が溶けていること、画像処理が少し強すぎて星像が荒れていることだ。これらが揃えばグランプリに押したい作品であった。
入選「月夜の白虹」
大西浩次氏によるコメント
背景の西の空には沈む直前の月、東の空には昇る冬の大三角、そうして、この雲海の雲が月虹を作っている貴重な瞬間を的確に捉えた作品です。パラグライダーの滑空場からの撮影でしょうか。月虹の下の旗を入れたかったのでしょうか。もし、もう少し斜面を降りることができれば、左側の方がすっきりして月虹がさらに強調出来てよかったと思います。
入選「十三夜月を目指して」
北山輝泰氏によるコメント
月の作品の中でも、最もユーモラスに瞬間的な光景を切り取っていた作品です。望遠の画角に月が収まっている時間はわずかしかありませんが、その中でプラスワンのエッセンスを加えた作者の意気込みに拍手です。コースターがより月に接近したタイミングでさらに望遠で撮影(もしくはトリミング)したものがあれば、より印象的な作品になるでしょう。
入選(審査員特別賞・大西氏)「宇宙からのメッセージ」
大西浩次氏によるコメント
「キラキラ」輝くお星さま。これは、上空の風の影響で、明るい星の方向の空気密度が短時間に変動し、星からの光を屈折させると同時に、七色に分ける(分光)効果で星の明るさや色が高速で変わるのです。まさに、この様子を肉眼で見ていると「キラキラ」輝くお星さまなのですが、これを超望遠レンズで見ると、七色に次々変わる様子が見えるのです。この写真は、シリウスのような一等星が比較的低空にあるときに、望遠レンズを振り回して明るさと色の変化を線で表現した作品です。私も色の変化を示す科学的な写真を撮影するのですが、この写真はカメラを動かしていろんな線を描くことで、この現象をアートの表現と使っているのです。今回、数パターンの応募をいただいたのですが、一番シンプルに描いた作品を選びました。この写真は科学写真とアートの融合です。今回のコンテストでは、この作品を当てはめる部門が無かったので、特別賞として選ばせていただきました。
入選(審査員特別賞・北山氏)「春の夢」
北山輝泰氏によるコメント
画面いっぱいに写り込んだカラフルなテールライトの軌跡が印象的な作品です。桜の木の存在感を出すためには月明かりを使う方が自然ですが、人工的な光源で照らすことで、闇夜に浮かび上がる雰囲気を演出しています。また、桜と星を撮影しようとすると開けたところにある一本桜や、群生しているものを探して撮影するのが常ですが、道路脇など身近なものにある桜でも撮り方によっては一味違う作品が撮れることを気づかせてくれた作品です。今回のフォトコンテストの趣旨とは少々違いましたが、画作りの上手さを賞して特別賞を進呈したいと思います。
第2回「それぞれの宙を見上げて」星空フォトコンテスト2021
入賞作品の展示等のご案内
2月24日から開催される「カメラと写真映像のワールドプレミアムショー CP+2022」では、上位入賞作品を中心に、今回のフォトコンを振り返って審査員お二人のトークライブを予定しています(2月26日(土)13:00〜14:30を予定)
「星空フォトコンテスト〜それぞれの宙を見上げて〜 作品審査を振り返って」
詳細はビクセンCP+オンラインページ(https://www.vixen.co.jp/activity/cp-plus2022/)をご覧ください。
東京都三鷹市にある「天文・科学情報スペース」、および、東京都千代田区にある「東京ガーデンテラス紀尾井町」の2箇所での展示会を予定しています。両展示会では、すべての入賞作品を展示する予定です。展示期間など詳細は、(ビクセンWebページ)にて後日告知いたします。
※新型コロナウイルス感染症拡大防止のため中止となる場合がございますので、予めご了承ください