ラグビーを見る スポーツライター | 大友信彦

30年近くラグビーを追い続けている、スポーツライターの大友信彦さん。
ボールを奪い合う密集の中の激しい攻防や、ふと見せる選手の表情のなかにテレビには映らない見どころがある。 双眼鏡でぜひそれを見て欲しいという大友さんにお話を伺いました。

撮影協力:明治学院大学 体育会ラグビー部

ラグビーに双眼鏡は必携

ラグビーというスポーツは、70メートル×100メートルという広いグラウンドを使うワイドな要素と、両チームの選手が固まりになって押し合い、ボールを奪い合う密集戦という相反する要素を持っています。この2つの要素を両方楽しむために、必携のツールが双眼鏡です。

「ブレイクダウン」に注目!

ラグビーの勝負を左右するのが、ボールを持った選手がタックルされたあと、両チームの選手がボールを奪いあう「ブレイクダウン」と呼ばれる戦いです。タックルのあと、ボール支配をめぐって互いの選手が体をねじ込み合う。特に相手ボールを奪うターンオーバーは、カウンターアタックでトライを奪うビッグチャンス。でも、最も重要な働きをした選手は目立たない。多くの場合、密集の下敷きになってしまい、起き上がるときにはボールはもう密集から出て、次のランナーによって運ばれている。だからテレビには映らないし、観客も多くは目を離しています。でも双眼鏡があれば、誰が決定的な働きをしたかをチェックできます。

ブレイクダウン

タックルが成立した後にボールを奪い合うブレイクダウンはゲーム中に100回以上も発生する、勝負を分けるプレー。相手よりも低く踏み込み、早くボールを踏み越え、相手選手を押しのけて前に出れば勝ちだ。

勝負を決めるプレーや選手の表情を見逃さない

両チームの16人が塊になって押し合うスクラムや、両チームのフォワードが2列に並んだ真ん中にボールを投げ入れて奪い合うラインアウトも、遠くから見ていると何をしているか分かりにくいけれど、試合後のインタビューでは「あのスクラムが勝負を決めた」といった言葉が聞かれることがよくあります。ここでも、双眼鏡は頼もしい味方になります。双眼鏡で見ると、どちらの選手が優勢か、誰が誰を持ち上げているのか等々、表に出にくい攻防が見えてきます。

ときには、スクラムを組む前にどっちがイヤそうな表情をしているとか、選手の感情も覗けてしまうのが、観戦者にとっては楽しいところ。ラグビーは80分という長い時間をかけて、走り回ってぶつかり合って取っ組み合って戦う過酷なスポーツなので、感情や消耗度がどうしても表情に現れます。ときには痛さをこらえていたり、弱気になった選手を励ましていたり、そんな姿を見せる選手に感情移入してしまうこともあります。

スクラム

両チームのフォワード(FW)8人ずつが塊(かたまり)となり、押し合う中にボールを投入して奪い合う。味方同士が堅くバインド(密着)して力を合わせるのがポイントだ。

タックル

タックルはラグビーの華だ。低い姿勢で背中を伸ばし、顔を上げて相手(標的)から目を逸らさず、飛び込まずに足を踏み込み、手で捕まえるのではなく肩をぶつけて相手の突進を止める。スタジアムが最も湧く瞬間だ。

モール

集団でボールを相手から守り、かたまりになって前進するのがモールと呼ばれるフォワードプレーだ。力任せに見えるが、チームワーク、味方同士のコミュニケーションが鍵を握る。

オススメは「片目覗き」

もちろん、グラウンドを広く使ってボールを動かして、全速力で走りあうこともラグビーの魅力です。その要素も楽しむための裏ワザが「片目覗き」。僕の場合、右目は双眼鏡でボールを追いながら、左目は裸眼でグラウンドを広く見ます。

慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、コツを摑むと、全体像とアップの画像がテレビの2画面分割を見るように、パラレルに頭に入ってきます。ポイントは、「片目覗き」では、どちらかの映像が気になったら、双眼鏡であれ肉眼であれ、遠慮なく両目に切り替えること。スポーツ観戦は楽しむことが一番ですから、ストレスを感じないように見るのが何よりです。両方の要素を欲張って取り込みながら、観客席から、オリジナルのラグビー観戦を楽しんでください!

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プロフィール |  PROFILE

大友信彦

1962年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。
1985年からフリーランスのスポーツライターとして『Sports Graphic Number』(文藝春秋)で活動。'87年からは東京中日スポーツのラグビー記事も担当し、ラグビーマガジンなどにも執筆。ラグビー専門ウェブマガジンRugbyJapan365スーパーバイザー。
20年以上にわたるビクセン双眼鏡の愛用者でもある。
主な著書に『楕円球に憑かれた男たち』(洋泉社1998年)、『再起へのタックル』(洋泉社1999年)、『ザ・ワールドラグビー』(新潮社2003年)、『奇跡のラグビーマン 村田亙 37歳の日本代表』(双葉社2005年)、『釜石ラグビーの挑戦』(水曜社2007年)など。近著に『オールブラックスが強い理由 ラグビー世界最強組織の常勝スピリット』(東邦出版2011年)、『エディー・ジョーンズの監督学』(東邦出版2012年)がある。

オフィシャルブログ 
http://otomo-rug.jugem.jp/