ビクセン | 天体望遠鏡、双眼鏡を取り扱う総合光学機器メーカー
2021年11月19日に、ほぼ皆既の部分月食が見られます。
このページでは、月食のしくみや観察方法、そしておすすめの観測機材をご紹介します。
【11月19日16:15~】部分月食ライブ配信
大学准教授とビクセン社員が視聴者の質問に答えます。
地球は太陽の光を受けて輝き、太陽と反対の方向には地球の「影」が伸びています。この地球の「影」の中を月が通過することによって、月が暗く見えたり欠けたように見える現象が「月食」です。
月食は太陽-地球-月が一直線に並ぶときに起ります。この時、月は満月です。ただし満月の時に必ず月食になるわけではありません。それは、星空の中での太陽の通り道に対して月の通り道が少し傾いているため、満月の時に必ず地球の影の中に月が入るわけではないからです。地球の影の北側や南側のそれたところを月が通ると、月食は起こらず、月はふつうの満月となります。
月の一部が「本影」に入った状態が「部分月食」です。ただし今回の月食は、月の97,8%が陰に入るので、「皆既月食」に近い「部分月食」と言えるでしょう。
「皆既月食」の場合、月が完全に影に入った状態になると月全体が赤黒く(赤胴色)見えます。その理由は地球の大気の影響です。太陽光が地球の大気の中を通過する際、波長の短い「青い光」は空気の分子によって散乱(レイリー散乱)されてしまいほとんど通過できません。一方、波長の長い「赤い光」は散乱されにくく、光は弱められながらも大気を通過します。これは、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由です。また、地球の大気はレンズのような役割もするため、太陽光が屈折して、本影の内側に入り込みます。こうして地球の大気を通過し、屈折して届くかすかな赤い光が皆既月食中の月面を照らし、赤黒く見せるのです(下図参照)。
今回は「部分月食」ですが、食の最大の時には、影の部分は「皆既月食」の時のように少し赤胴色に見えるかもしれません。双眼鏡や天体望遠鏡を使ってぜひ観察してみてください。
ターコイズフリンジ(ブルーベルトとも呼ばれる)とは,月食の際、月面上で地球の影の周辺部分が青っぽく見える現象です。(写真参照)
この現象は、地球の成層圏上部のオゾン層では太陽光の赤い光が吸収され,その一方で成層圏上部ではレイリー散乱が起こりにくいことから、結果、青い光が透過して月面を照らすからではないかと言われています。ターコイズフリンジを肉眼で確認することは難しいので、デジタルカメラで撮影してみましょう。地球の影の青色の縁取ちを、うまくとらえることができるかもしれません。
天体望遠鏡の入門機です。付属レンズにより、2通りの倍率(20倍、40倍)で観察ができます。また、付属の 45°正立プリズムを取付けることで、地上の景色や野鳥などの観察にも使用できます。シンプルな操作で天体望遠鏡初心者に扱いやすく、小型軽量なので手軽にご使用いただけます。
手ブレが少なく、扱いやすい倍率8倍モデル。レンズ口径25㎜でコンパクトなボディ設計ながら、優れた光学性能により明るく鮮明な視界を実現。皆既月食中の、赤黒く輝く月の姿を大迫力で楽しむことができる手頃なアイテムです。
11月19日の夕方から、全国で部分月食を見ることができます。
月が欠け始めるのは午後4時18分からですが、この時間は北海道や東北地方北部を除いて月がまだ空に昇ってきていません。なので、多くの地域では、月がすでに欠けた状態で昇ってくる「月出帯食(げっしゅつたいしょく)」となります。月が昇ってくるタイミングで月食がスタートしているので、東の空の低いところまでよく見える場所で観察しましょう。
今回の部分月食は月の97.8%が陰に入る、「たいへん食分が深い」部分月食となります。あとちょっとで皆既月食です。皆既月食の場合、月が完全に影に入った状態になると月全体が赤黒く(赤胴色)見えるのですが、今回は部分月食とはいえほぼ月が陰に隠れることから、食の最大の時には皆既月食の時のように、影の部分は赤胴色になるのでは?と期待されます。
ぜひ、双眼鏡や天体望遠鏡を使って、じっくり観察してみてください。天体望遠鏡にカメラを取付けて、刻々と変わっていく月の様子を写真に撮るのもおすすめです。
地名 | 月の出 | 部分食の始まり | 食の最大 | 部分食の終わり |
---|---|---|---|---|
那覇 | 17時35.6分 | 月は地平線の下 | 18時02.9分 (食分0.978) |
19時47.4分 |
福岡 | 17時10.2分 | 月は地平線の下 | ||
京都 | 16時45.3分 | 月は地平線の下 | ||
東京 | 16時27.6分 | 月は地平線の下 | ||
仙台 | 16時17.1分 | 16時18.4分 | ||
札幌 | 16時03.0分 |
地名 | 月の出 | 部分食の始まり |
---|---|---|
那覇 | 17時35.6分 | 月は地平線の下 |
福岡 | 17時10.2分 | 月は地平線の下 |
京都 | 16時45.3分 | 月は地平線の下 |
東京 | 16時27.6分 | 月は地平線の下 |
仙台 | 16時17.1分 | 16時18.4分 |
札幌 | 16時03.0分 |
皆既食の始まり | 月は地平線の下 |
---|---|
食の最大 | 18時02.9分 (食分0.978) |
部分食の終わり | 19時47.4分 |
月食は、肉眼でも観察できる天文現象ですが、双眼鏡や天体望遠鏡があると、さらによく見ることができます。
アウトドアにおける使い勝手を最優先に設計された双眼鏡です。倍率8倍、レンズ口径42㎜は天体観測にベストマッチなスペック。ビノホルダーHと三脚を併用することにより、安定した観察を実現します。
※ビノホルダーHと三脚は別途ご用意ください。
見たい天体の位置を教えてくれる、「ゲーム感覚で星を探せる」人気モデル。お持ちのスマートフォンに専用のアプリをダウンロードして天体望遠鏡に装着することで、スマートフォン画面を見ながら目的の天体を探せる機能を備えています。
部分食が始まる前と終わった後は、「半影食」の状態になります。半影食では本影食ほど明るさの変化はないので肉眼ではわかりづらいですが、よく見ると、月の一部が薄暗くなっていることがわかるかと思います。双眼鏡や天体望遠鏡を使うと、半影食はわかりやすいです。また、カメラで撮影することでも、月が薄暗くなっていることがはっきりとわかります。
満月の輝きはとても明るく、夜空の星々を隠してしまいます。しかし、皆既中は月が赤銅色に暗く輝くことから、それまで満月の光に隠されていた星がはっきりと見えてきます。
月のまわりにどんな星があるのか、ぜひ確認してみましょう。さらに双眼鏡や天体望遠鏡があれば、よりはっきりとたくさんの星を確認できるでしょう。
月食を撮影する際に役立つにが「赤道儀」です。赤道儀があれば、天体(月)の動きに合わせてカメラを自動的に追尾させ撮影することができます。特に、撮影用のコンパクトなポータブルタイプの赤道儀が扱いやすく、おすすめです。
最新モデルのポータブルタイプ赤道儀ですお持ちのカメラを搭載することで、月食などの天文現象はもちろん、星雲や星団などの淡い輝きの天体や、天の川の地上風景を写しこんだ星景写真など、さまざまな写真の撮影を可能にします。
月がいつどの方角に見えるのかを案内する「月観察支援アプリ」です。
日付と時間を指定することで、その日時の月の位置を知ることができます。
「月食表示モード」では、現在位置での月食の様子がシミュレーション可能です。
何時ごろどの方角で月食を観察できるのか、事前に確認しておきましょう。
画面左下の“月が欠けたマーク”をタップし、「2021年11月19日部分月食」を選択すると「月食表示モード」になります。
・カメラ(露出設定が調整できるもの)
・望遠レンズ
・三脚
・(星空雲台ポラリエU:ビクセンの「星空雲台 ポラリエ U」などポータブルタイプの赤道儀を使用すると、よりノイズの少ない美しい月食写真に仕上げることができます。)
1.カメラをマニュアルモードに
「ISO感度」「F値」「シャッタースピード」を個別に設定する必要があるので、基本的にはマニュアルモードで撮影を行います。
2.手振れ補正をOFFに
三脚に固定して撮影する際、手振れ補正により誤操作が起きる場合があるので、事前にOFFにしておきましょう。
3.ピント調整はマニュアルフォーカスで
あらかじめ可能な限り望遠レンズの望遠側にピントを合わせておきましょう。
カメラのライブビュー機能が使用できる場合は、できるだけ拡大した状態で月にしっかりとピントを合わせます。
4.露出の設定(皆既月食前後)
皆既の前後、通常の満月では以下の設定を目安とします。
ISO感度400,シャッタースピード1/800秒,絞りF8.0
ただし、今回の月食では月の出のタイミング(月の高度が低いタイミング)で月が欠けるので、撮影開始時はこれよりも少し明るい設定で撮影すると良いかもしれません。
月の高度が低い時間帯は、明るい設定で撮影することをおすすめします。
実際に欠け始めると月の明るさも変化するので、露出も少しずつ調整が必要です。
上記の値から、ISO感度800,シャッタースピード1/200秒,絞りF6.3くらいの間で調整しつつ、撮影してみましょう。
撮影した画像を確認してより明るく撮りたい場合は、「ISO感度を上げる」「F値を小さくする」「シャッタースピードを遅くする」のいずれかの設定変更を行います。ただし、シャッタースピードが遅すぎると像ぶれる可能性が高くなるので、遅くなり過ぎないように気を付けましょう。
5.露出設定(皆既月食中)
皆既月食中の月はとても暗くなるため、以下の設定を目安に撮影してみましょう。
ISO感度3200,シャッタースピード1/5秒,絞りF6.3
☆「ポラリエU」などの赤道儀を使うと月の動きに合わせて追尾して撮影できるため、さらに遅いシャッタースピードでも撮影可能になります。
赤道儀使用時は以下の設定を目安に撮影してみましょう。
ISO感度800,シャッタースピード2秒,絞りF8
ポラリエUは気軽に持ち歩けるコンパクトな自動追尾装置。天体の日周運動に合わせてカメラを動かし、長時間の露出でも星を点像としてとらえることができます。月モードも搭載されているので月食の撮影にも力を発揮します
天体望遠鏡『FL55SS鏡筒』の特設ページでは、月と景色を撮る方法について紹介しています。月食と景色の撮影に挑戦してみてはいかがでしょうか?詳しくはこちらから
フローライトレンズを搭載した大変コンパクトなフォトビジュアル鏡筒です。
焦点距離300mmと非常に短焦点で望遠レンズとしても活躍します。
地球はほんとうに丸い?地球から月までの距離は?月食の観察で確かめてみよう!
出典:大西浩次(長野工業高等専門学校)月食観測による月までの距離測定月食から科学する
皆さんは、地球が球形だと言うことを学校などで習っていると思います。
でも、どのようやってこのことを自分の目で確かめられるでしょうか。
ひとつの方法は月食の観測から確認できます。これから、月食で地球が球形であることを確かめる方法をご紹介します。
下のイラストは、月食時のスケッチの様子です。
この月食の時の太陽、地球、月の位置関係は図1のようになっています。
このように、月食時の「円弧に欠けた部分」は、地球の本影の影が月面に映っている様子です。
紀元前350年頃、アリストテレスは月食の時の月面に映る地球の影が「いつでも」円弧を描いているのを見て、「地球は球形である」と考えました。皆さんも、月食を見たとき、この影の形から地球が球形であることを「体感」してみてください。
ところで、図1を見ると地球の影は平行でなく斜めになっています。
通常、「太陽光線はほぼ平行と考えて良い」と考えられますが、太陽の見かけの大きさを無視することはできません。そのため、図1のように、太陽の上のほうからの光線と下のほうからの光線が傾いており、地球の影は、収束するコーン状の影(本影)と拡散するコーン状の影(半影)が出来ます。
月食時に見える地球の影は、収束する影(本影)を月で投影して見ています。さてここで、実際の地球の大きさと投影された影の大きさの関係はどうなっているのでしょうか。
このことを考えるヒントは、日食の状況にあります。日食とは、太陽が月に隠される現象です。ところで、地球から見ると、太陽と月の見かけの大きさは偶然ほぼ同じきさに見えます。
また、皆既(金環)日食になる領域が非常に狭いという事実を考えると、日食時の月の影の収束点がちょうど地球上にあると考えてよいことが分かります。
すなわち、地球と月の間の距離dで、ほぼ、月の大きさ1個分に相当するだけ影の大きさが小さくなっているわけです。
この日食をヒントにすると、地球の本影の収束の様子がわかります。
すなわち、月-地球間の距離dで、地球の影の直径は、ちょうど月の直径分だけ縮小しているはずです。
これより、月面に写る地球の本影の大きさから、月のサイズがわかります。
古代ギリシャ時代の紀元前280年ころ、アリスタルコスは、月食のときに映る地球の影の大きさを測って、月の直径が地球の直径の約1/3の天体であると推定しました。このことと、月の見かけの大きさが約0.5°であることを使って、月までの距離を求めました。
日食の状況を考慮すると、月の直径が地球の約1/4の天体であることが分かります。
これらの考察結果を使って、実際に月までの距離を求めてみましょう。
① 月面に映る本影の「影の円弧」の形より、本影の大きさに対する月の大きさの比を求めてみよう。
実際にやってみると、本影の大きさは月の大きさのほぼ3倍になるでしょう。
ここで、満月の位置での本影の大きさは、月の直径分縮小していることを考慮すれば、月の大きさが、地球の大きさの約4分の1であることが分かります。
② 地球の半径は約6400㎞です。このことより、月の半径(直径)はいくつになるでしょう。
③ ②で求まった月の実サイズに対して、月の見かけの大きさは0.5°です。
一方、月の見かけの大きさは、
(月の実際の大きさ)÷(月までの距離d)で求められます。
④ 月の見かけの大きさは、角度で約0.5度なので、
月までの距離d=(1/4地球直径)÷0.5度=(1/4地球直径)/((π/180)×0.5)=約30倍地球直径となります(*)。
ここで、地球半径を6400 kmとすれば、月までの距離は約38万kmとなります。
(*)勉強中の皆さんへ
ここで、(π/180)×0.5は、角度をラジアンで表示する変換です。
ラジアンとは半径1の円周の長さで角度を表す方法(弧度法)です。
ラジアンで表した角度θが十分小さいときは、
sinθ≒tanθ≒θが成立して、このような距離の計算が簡単に求められます。
(*)さらに学習したい方へ
大西浩次先生(長野工業高等専門学校)の「月食を楽しむ・月食から科学する」最新情報はこちらからご覧ください。
月食の楽しみ方を科学の視点から、詳しく説明しています。
2021年11月19日16:15より部分月食の様子をYoutubeでライブ配信します。
ライブ中に視聴者から寄せられた質問に答えます。
ゲスト:川越 至桜(かわごえ しおう)先生
東京大学生産技術研究所准教授。博士(理学)。日本学術振興会特別研究員、自然科学研究機構国立天文台、東京大学生産技術研究所特任研究員、特任助教、講師を経て、2018年9月より現職。2019年度文部科学大臣表彰科学技術賞を受賞。主な著書として「科学の最前線を歩く (知のフィールドガイド、白水社、2017)」などがある。専門は超新星爆発、ニュートリノ天文学、STEAM教育など。
東京大学准教授の川越至桜先生に、天文部応援中参加校の高校生に対し、11月19日の部分月食や星にまつわる授業をしてもらいました。部分月食の解説はもちろん、星と私たちの関係など、幅広いお話をして頂きました。
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