単眼鏡が広げる美術鑑賞の世界

根付 江戸と現代を結ぶ造形

玉堂、文人としての生き方

根付(ねつけ) は、印籠や巾着などの持ち物を携帯する際に紐の先端に付け、帯にくぐらせ留具として用いる小さな彫刻(細工物)です。ポケットがない和装の時代には日常的な実用品であった根付ですが、意匠や細工が次第に洗練され、庶民文化が成熟する江戸後期に全盛期を迎えます。裕福な町人は素材の贅沢さや技巧の精密さ、洒脱で機知に富む意匠を競い合い、根付は装飾品であると同時にコレクターズアイテムとしての性格を強めていきます。しかし明治以降洋装化とともにその需要は衰え、欧米人によって美術工芸品として新たな価値を見いだされた根付は、その多くが海外へ流出しました。


父子の芸術ものがたり

こうして国内から消えてゆくかに見えた根付ですが、主に海外向けの輸出工芸品として存続し、戦後は研究会の発足や展覧会の開催など根付を再評価する動きが盛んになります。1970年代には作り手の側で大きな意識改革がおこり、伝統的な根付のコピーを制作する<職人>から、オリジナルな発想で独自の個性を発揮する<芸術家>へと移行していきます。本展覧会では、「京都 清宗根付館」が所蔵する江戸から近代にかけての伝統的な根付と現代根付約300点をご紹介します。新しい素材や現代性を盛り込みながら今も息づくその魅力と、江戸と現代をつなぐ造形の妙をご堪能ください。


珠玉の作品群を一覧する、
大規模展覧会

珠玉の作品群を一覧する、大規模展覧会

三鷹市美術ギャラリーについて
三鷹市美術ギャラリーは、三鷹市の施設として1993年に開館しました。駅前という交通至便な立地と、午後8時までの開館時間(企画展開催期間)が特徴です。年間2−3回開催される企画展は、幅広いジャンルにわたるテーマで実施しています。


珠玉の作品群を一覧する、大規模展覧会

開館期間
2017年1月14日(土)~3月20日(月・祝)
開館時間
10:00〜20:00(入館は19:30まで)
会場
三鷹市美術ギャラリー
休館日
月曜日(3/20は開館)
観覧料
一般=600円 65歳以上・学生(大・高)=300円 中学生以下・障害者手帳をお持ちの方は無料
主催
三鷹市美術ギャラリー・(公財)三鷹市スポーツと文化財団
協力
(公財)京都 清宗根付館
三鷹市美術ギャラリーHP


展示作品と見どころ

解説:三鷹市美術ギャラリー 主任学芸員 富田 智子さん

  • 玉秀(GYOKUSHU)
    《雪舟》

    江戸時代
    象牙 横3.4×高4.3×奥2.7cm


    玉秀(GYOKUSHU) 《雪舟》

    室町期に活躍した水墨画家・雪舟の逸話をあらわした根付。松の木に縛り付けられた小坊主姿の雪舟の周りには大きな鼠の姿が見られます。縛りつけられたのはお寺の本堂だと思っていましたが、この作品では松の木です。

  • 景利(KAGETOSHI)
    《異国船》

    江戸時代
    木 横4×高2.9×奥2.7cm


    浦上玉堂 《春山染雨図》

    江戸時代、異国の大型船をイメージして作られた根付。甲板や船室2階部分には幾人もの人物が彫り出されています。簡素な彫りにしてそれぞれの異なる動作を捉えており、船の大きさと船上の活気が伝わります。

  • 藻水(SOSUI)
    《盲人の丸木橋》

    近代
    黄楊(つげ) 横5×高2.5×奥2.1cm


    浦上玉堂 《閣日微陰図》

    怖々と手探りで丸木橋を渡っている二人の盲人。白隠和尚の和歌「世のなかは 唯に座頭の丸木橋 わたるこころで 渡るなるらむ」(盲人が丸木橋を渡るような気持ちで日々を真剣に暮らしなさい)を主題にしています。二人の表情や緻密な彫りを見ていると、自分の大きさを忘れてしまいそうです。

  • 岸 一舟(ISSHU Kishi)
    《羽衣》

    1959年
    象牙 横4×高5.6×奥3.2cm


    浦上玉堂 《山翁嘯咏図》

    象牙は色を定着させるのが難しい素材です。能装束の華やかな文様と色彩を表現するために、象牙に細かい傷をつけて色を入れます。柄の無い部分は布の織り目を刻み、地色を表現しています。

  • 宮崎輝生(TERUO Miyazaki)
    《花籠》

    2007年
    黒柿・白蝶貝・象牙・べっ甲・漆・銀・黄蝶貝・珊瑚 横4×高2×奥5cm

    浦上春琴 《浦上玉堂像》

    貝やべっ甲をはじめ金属などの材料を削り、漆器の表面にはめ込む「象嵌(ぞうがん)」の技法が用いられています。その中でも、表面から少し浮き出ているのがこの「芝山象嵌」の特徴です。小さな箱根付の上に花開いた伝統工芸の神髄をお楽しみください。

  • 中畑泰成(TAISEI Nakahata)
    《春》

    2012年
    黄楊 横3.2×高3.6×奥3.3cm


    浦上春琴 《高雄紅葉画賛巻》

    春になり、出番が少なくなった〈かんじき〉の縄をかじる鼠ですが、鼠、縄、かんじきの質感がそれぞれに彫り分けられています。小さな鼠の毛並みにも注目です。

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