
<2001~2023年の土星>
撮影 : ©阿久津富夫
ビクセン | 天体望遠鏡、双眼鏡を取り扱う総合光学機器メーカー
惑星の中でもダントツ人気の土星。
環のある姿がカッコよくて、かわいくて...。
でもその環が見えなくなる不思議な現象が、2025年3月24日と5月7日にあるというのです。
かなりレアなこの機会に、土星のこと、よ〜く学習しておきましょう!
<2001~2023年の土星>
撮影 : ©阿久津富夫
<2024年12月の土星>
よく見ると、環がとても薄いことに気づきますね。撮影 : ©阿久津富夫(2024.12.2)
土星は、太陽系の惑星の中で木星の次、2番目の大きさです。
球体部分は地球の約9.4倍で、直径約120,536km。環の部分については直径が約27万km(※1)あるのに対し、厚さは数十m以下しかありません。
規模感をつかむために、想像上で模型を作ってみましょう。コピー用紙1枚の厚さ(約0.09mm)を土星の環の厚さとする模型を作ってみると、土星本体の直径は1kmちょっと、土星の環の直径は約2.4kmにもなるのです。土星本体の大きさに対して、環がどれだけ薄いか、わかりますね。
この環、実際は一枚の円盤のような構造をしているのではありません。
小さな岩石や塵[ちり]が混じった、数m〜1mm以下の大小無数の氷のかけらの集合体で、時速約6万6,000〜8万4,000kmものスピードで土星本体の周りを回転し続けているのです。
※1...小型望遠鏡で見える部分だけで約27万km。見えない部分も入れると約68万kmもあると言われています。
<A_公転軌道上の土星と、地球から見える姿>
土星が軌道を公転していくと、地球から見える姿(角度)が変わっていきます。
<B_2025年3月24日の土星のイメージ>
地球から見ると、土星を真横から見ていることになり、環の厚みはほとんど見えない。
土星の公転軌道に対し、土星の自転軸は約26.7度傾いています。そのため地球から土星を見ると、上の画像やイラストAのように、時期によって見える部分(角度)が変わります。
また土星の公転周期は約30年なので、約30年周期で地球から同じ角度で見られることになります。
このときイラストAの「地球から見た土星(1)と(3)」のように1周期につき2度、土星を真横から見ることになるのですが、土星の環の厚みがあまりにも薄いため、環はまるでなくなったかのように見えるのです(イラストB)。これが3月24日の“土星の環の消失”で、イラストAの「地球から見た土星(3)」の状態になります。
ぜひ天体望遠鏡などで見てみたいところですが、このころの土星は地球から見ると太陽の方角に近いので、観察には向いていません。
<C_2025年5月7日の土星のイメージ>
ちょうど真横、環の薄い部分に太陽光があたっている。環の広い面には光があたっていないので、暗くて見えない。
3月24日を過ぎると、土星はイラストAの(3)から(4)へ向かって移動し、土星はお尻(南極側)を地球に向け始めます。
ところが5月7日、土星の環はまた見えなくなります。これは3月とは違う理由によるものです。
土星のような惑星は自分から光を発してはいません。太陽に照らされることによって、私たちに見えています。この太陽光が、今度は土星を真横から照らすことになって、環の広い面に太陽光があたらず、暗くて見えないのです(イラストC)。
この頃になると土星の観察が可能で、深夜2:50頃に東の空から昇り始めます。土星の少し北寄りには明けの明星、金星もキラキラ輝いています。(イラストD)
ただし高度は10°前後とかなり低く、日の出まで2時間もないので、東の低い空が見渡せる観察場所を事前に探しておきましょう。
※時刻は東京を基準としています。
<D_2025年5月7日3:30 土星の位置>
※時刻は東京を基準としています。