Vixen の科学情報誌 So-TEN-Ken(ソウテンケン) WEB版

遠ざかる火星は今のうちに見ておこう!

約2年2か月ごとに地球と最接近する火星。
でもその距離は今、だんだんと遠ざかっています。
“最も接近しているはずなのに遠くなる”…というちょっとフシギな地球と火星との関係ですが、次の最接近よりも次の次の最接近よりも、今冬の最接近の方がオススメの理由、じっくりご説明します。

画像「火星と天の川」

<2018年の火星(左)と天の川> 撮影:©山崎明宏(2018.7.19)

俊足の地球とのんびり屋さんの火星

イラスト「地球と火星の最接近時の位置」

A:地球と火星の最接近時の位置

イラスト「この冬の火星の位置」

<B:この冬の火星の位置>
いずれも20:00の状態。南中時刻は12月1日→0:15、1.1→21:25、2.1→19:29。いずれも高度約79°とかなり高い。
※時刻は東京を基準としています。

イラストAを見てみましょう。地球も火星も、太陽を中心に回っています。地球の軌道は青、火星の軌道は赤の円で示していますが、この円を1周するのに、地球は1年、火星は約1.88年かかります。ゆっくり回る火星を地球が追い抜くとき、地球と火星の距離(黄色の線)は最も短くなる(=最接近)のですが、1度追い抜いてからまた次に追い抜くまでに約2年2か月かかります。
次に軌道の形に注目。火星の軌道は だ円になっています。そのため地球が火星を追い抜く(最接近)ときの黄色線の長さ(最接近時の距離)はその度に変わります。2018年と2020年の黄色線はとても短いですが、その後、2022年、2025年、2027年とだんだん長くなっていきます。つまり2年2か月ごとに地球と火星の最接近が起こっても、その距離はしばらくの間、遠くなる一方なので、地球から見る火星の大きさや明るさも小さく、暗くなっていき、イマイチになっていくのです。

火星の北極を探してみよう!

画像「2018年火星大接近前の火星」

<2018年火星大接近前の火星>
撮影:©熊森照明(2018.5.31)

今回の火星最接近は2022年12月1日。おうし座の1等星アルデバランの東側で、-1.8等級の輝きを放っています。火星もアルデバランも赤っぽい色をしているので、2つ並ぶ姿は夜空で目立つでしょう。この日を中心に前後1か月半〜2か月は観察好期。つまり2023年1月までは観察に“すごくオススメ”、2月も“まだまだオススメ”なので、この冬は何度も火星を見て楽しんでください。
最接近時の南中高度(※1)はその度に違っていて、前回の最接近(2020年)では約60°、前々回(2018年)は約28°でしたが、今回は約79°まで高くなります。高度が高いと大気のゆらぎなどが少なくなるので、天体望遠鏡で観察したとき、より鮮明に見えます。口径80mmぐらいの屈折式天体望遠鏡を使って100〜150倍の倍率で見ると、火星の地表の模様がわかるかもしれません。地表のほとんどは酸化鉄、つまりサビ。それで星全体が赤っぽい色に見えるのです。場所によって成分が多少異なるので、その色味も違っています。また火星の北極や南極が白くなっている様子も見られるかもしれません。これは氷やドライアイスで覆われた部分で極冠[きょっかん]と呼びます。火星の1日は地球とほぼ同じ24時間40分なので、日時を替えて観察すると、また少し違った火星を見ることができるかもしれません。

※1…真南の方角にあり、高度が最も高くなるとき

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