英語で陶磁器は“china”。では、“japan”は?正解は、漆器。日本を代表する伝統的工芸品として、海外に輸出され、多くの人々を魅了しました。あのマリー・アントワネットも漆を愛した人物の一人。現在でも、ヴェルサイユ宮殿には約70点からなる彼女の漆器コレクションが残されています。
漆の正体は、ウルシ科ウルシ属の落葉樹「ウルシ」の木から取れる樹液。古来より日本や中国、朝鮮半島などで用いられてきた天然の樹脂塗料です。丁寧に仕上げられた下地に、何回何十回と漆を塗り重ねることで、特有の艶やかな光沢が生まれます。
語源が、「麗し」(うるわし)とも「潤し」(うるおし)ともいわれるその透明感のある美しい色をまずはじっくり鑑賞してください。
「蒔絵」(まきえ)とは、漆工芸技法の一つ。 まず漆で模様を描き、その漆が乾かないうちに金や銀の粉を蒔きつけて、器の表面に定着させます。 一口に蒔絵と言っても、その技法はさまざま。フラットに仕上げる「平蒔絵」(ひらまきえ)もあれば、レリーフ上に盛り上げる「高蒔絵」(たかまきえ)もあります。
また、夜光貝やあわび貝といった虹色に輝く貝殻の内側を小さく割り、それらをモザイク状に張り付けた「螺鈿」(らでん)も蒔絵の一種です。 透明感のある漆黒と、金や銀、パールといったきらびやかな色とのコントラストは、まさに眼福。まずは肉眼で全体的に、あらゆる角度から心行くまでご堪能ください。 そして、そのあとは単眼鏡を取り出し、蒔絵の細かな世界を覗き込んでみてください。きっとさまざまな色が目に飛び込んでくるはず。その様は、まるで万華鏡のようです。
「堆朱」(ついしゅ)とは、中国漆器を代表する技法の一つ。漆を塗っては乾かし、塗っては乾かしを繰り返し、基礎となる漆の板を作り、それを彫ることで模様を施したもの。とてつもなく手間がかかっている工芸品なのです。
漆を塗り重ねて、漆の板を作る作業は、1年近くかかるとされています。 もし万が一彫り過ぎてしまったら、その時点で1年の作業はパーに。 絶対に失敗できない緊張感のようなものが、堆朱の作品からは伝わってきます。 堆朱の職人の真剣勝負。是非、単眼鏡を通じて向き合ってみてください。