アオギヌゴケ科 カヤゴケ属
分布:北海道~琉球 北半球
生育環境:岩下、岩壁、水際
流れに洗われた岩や濡れた岩壁などに着生しています。渓流によく見られるコケのひとつです。 暗緑色の大きな群落をつくり、水中のものは一見黒っぽくて地味ですが、岩上に出ているものを逆光で観察すると透明感のある美しい薄緑色に見えます。 急流部や滝では古い葉を失い、骨の様になった茎だけが残ることもあります。 丸い卵型の葉が特徴で、先端はやや尖り、葉の縁には小さな鋸歯(きょし)があります。
エビゴケ科 エビゴケ属
分布:北海道~九州 極東ロシア・朝鮮・中国・フィリピン・インドネシア
生育環境:岩壁
直射日光のあたりにくい垂直もしくはオーバーハング気味の岩壁に、下向きに垂れ下がるように着生します。火山性の岩石を好む性質があります。 葉は光沢を持ち、平たく細長いので、見た目と手触りは芝生を想わせますが、ルーペで観察してみると、茎先につく葉は頂端から中肋(ちゅうろく) (葉の真中を通る筋状の脈)が細長く突出し、ひげ状に伸びています。和名は、この姿を「触覚を持ったエビ」に見立て「海老蘚」という名がついています。
アオギヌゴケ科 ネズミノオゴケ属
分布:北海道~九州 アジア(東部~東北部)・北米西部
生育環境:樹基部、岩上、岩壁
艶のある丸い葉が、茎にぴったりと瓦状に重なりあってつくため、長い円筒形になるコケです。 和名は「鼠尾蘚」で、この尻尾状の茎や枝の様子を毛のない「ネズミの尾」に見立てたものです。 全体につるりとした印象で、初心者にも見分けやすい種のひとつです。ただし雨などに濡れてたっぷり水分を含むと、しばしば別種のように見えます。
シノブゴケ科 シノブゴケ属
分布:北海道~琉球・小笠原 朝鮮・中国・極東ロシア
生育環境:岩上、倒木
枝はほぼ同一面上に細かく羽状に分岐し、繊細なイメージのあるコケです。 湿っている時の豊潤な印象と、乾いてやせ細った時の印象の差が大きく、霧吹きで水をかけると、(劇的とはいえませんが)葉が開いていく様子を楽しめるコケのひとつです。 ルーペで見ると、茎と枝には小さな毛葉が密生しているのがよくわかります。
チョウチンゴケ科 ツルチョウチンゴケ属
分布:北海道~琉球 アジア(東部~東南部)・ヒマラヤ
生育環境:岩上、岩壁、倒木、地上
茎は横に這うものと直立するものがあり、這う茎は先端が地上に接したところから新しい芽を出します。葉は楕円形で、先端は尖っています。 雄株は直立茎の先端に雄器盤(ゆうきばん)と呼ばれる造精器を持っており、それが花弁状の苞葉(ほうよう)に囲まれているので、まるで花のように見えます。 胞子体(ほうしたい)の蒴(さく)は長い楕円形で、柄から垂れ下がり、春先には萌黄色が美しく映えます。
タチヒダゴケ科 タチヒダゴケ属
分布:本州~九州 朝鮮・中国
生育環境:幹・枝
乾くと蒴(さく)に縦ヒダができて、キンモウゴケ属という仲間としばしば混同されやすい種ですが、タチヒダゴケの葉は乾いても縮れず、枝に圧着します。 蒴の上部だけが葉の間から出ています。蒴が被っている帽子は丸みのある釣鐘型で、毛が生えていないことも特徴のひとつ。 胞子を放出した後の蒴は茶色くしぼみます。間近に観察しやすい倒木の枝上や、落ちた枝などに着生しているものを探してみましょう。
タマゴケ科 タマゴケ属
分布:北海道~九州 北半球
生育環境:岩上、岩壁、地上
腐植土の露出した路傍や林縁の土手などに半円球状の群落を作ります。茎の下半分は赤褐色の仮根に覆われています。 茎の下半分は赤褐色の仮根に覆われています。星状に開き、乾燥するとやや巻縮します。春に蒴(さく)をつけます。 若い蒴は球形で青りんご状をしていますが、熟すと褐色に変わります。乾くと縦シワが生じて縮み、ゴルフクラブ状に変化します。 日本では蒴の様子が「目玉」を思わせるせいか、俗に「鬼太郎の目玉おやじ」に例えられ、親しまれています。
スギゴケ科 ニワスギゴケ属
分布:北海道~九州 朝鮮・中国・極東ロシア
生育環境:岩上、倒木、地上
大型のスギゴケ類です。大きなものでは高さ20センチにもなります。 茎は枝分かれしません。葉は披針形で、湿ると茎から水平に広がり、少し反り返るようになります。 乾くと著しく巻き縮れるのが特徴です。雄株は雌株よりやや小さく、葉も短いのが特徴。蒴(さく)は円柱形をしており、白毛の密生した帽子を被っているように見えます。
コウヤノマンネングサ科 コウヤノマンネングサ属
分布:北海道~九州 北半球・ニュージーランド
生育環境:岩上、倒木、地上、水際
ふさふさとしていて、優美な印象のある大型の蘚類です。見た目の印象ではコケではなく、ミニチュアの木のような印象があります。 枝分かれせず、またあまり湾曲せずに直立するため、コケというよりはむしろ樹木の実生に似た姿となるのです。 枝先は尖らず、まるみを持っています。地下茎が発達していて、地上の茎は段階的に多くの枝を出します。
ギボウシゴケ科 シモフリゴケ属
分布:北海道~九州 朝鮮・中国
生育環境:岩上
陽当たりの良い乾いた岩の上に群生し葉は乾くと強く縮れて、茎に圧着します。 乾湿による違いが極端で、水を含むと即座に葉が開きます。乾燥や直射日光にも強いため、茎がほとんど枝分かれしない同じギボウシゴケ科のエゾスナゴケと共に、 園芸や緑化の業界では「スナゴケ」として扱われています。
シラガゴケ科 シラガゴケ属
分布:北海道~琉球 小笠原・ユーラシア
生育環境:地上
白みの強い緑色の塊を作ります。葉緑体を含む小さな細胞を、大きな透明細胞が挟み込むように覆っているために葉の色が白っぽく見えます。湿ると濃い緑色に変化します。 葉は茎から外れやすく、そこからクローン(栄養繁殖)で増えていきます。翁の白髪を思わせることに由来しているため、別名にホソバシラガゴケという和名もあります。 保水力に富む性質なので、コケ庭にもよく利用される人気の種です。園芸店では「山コケ」として販売されています。
イクビゴケ科 イクビゴケ属
分布:本州~琉球 朝鮮・中国・フィリピン
生育環境:地上
麦粒をちりばめたような蒴(さく)は初夏から見られ、雨粒などがあたると先端の白い部分(蒴歯)(きょし)からブロアー式に勢い良く胞子が放出されます。 和名の「猪首蘚」とは、蒴柄(さくへい)が極めて短い形状を首の短いイノシシ(猪)に見立てたものです。特異な形状ゆえに覚えやすく、 親しみやすい種類ですが、目が慣れないとなかなか見えてきません。林下の土手などを探してみましょう。
ミズゼニゴケ科 ミズゼニゴケ属
分布:北海道~琉球 北半球
生育環境:岩上、地上、水際
渓流への流れ込みや滝の側などの湿った岩の上、水の滴る岩壁、また森の中の緩やかな流れにある岩や小石の砂利の上などに群生するコケ類で、 ゼニゴケに似た印象があります。淡緑色から紅紫色を帯びた緑色で、形状の変化が多いコケです。基本的には二又状に分かれつつ重なりあって生えます。 冬には先端が細かく切れ込むので、別の種のように見えます。
ジャゴケ科 ジャゴケ属コケ
分布:北海道~琉球 北半球
生育環境:岩上、岩壁、倒木、地上、水際
葉状体コケ類の代表種といってもよく、大型でよく目立ち、また全国に広く分布しています。 表面に六角形の明瞭な区画があり、中央に気質孔(きしつこう)と呼ばれる、呼吸のための空気孔があります。 葉状体の表面を指先で少し強くこすると独特の強い香りが立ち昇り、人によって松葉臭、松茸臭、ドクダミ臭などさまざまに表現されます。 春にもやしのような半透明の柄を高く伸ばして、胞子を飛ばす姿はキノコのようです。
ハネゴケ科 ハネゴケ属コケ
分布:北海道~琉球 東アジア
生育環境:岩上、倒木、地上
わかりやすい茎葉体のコケ類のひとつですが、一見したところでは蘚類に見えてしまうかも知れません。「丸葉羽コケ」という和名の通り、 葉が茎に羽のように付きます。べたっとした印象の葉状コケ類とは異なり、愛らしいイメージがあります。 葉は先端のまるい卵型をしていて、長さが幅よりも明らかに長いのが特徴です。葉縁には小さな鋸歯(きょし)があり、肉眼でも判別ができます。
ヤスデゴケ科 ヤスデゴケ属
分布:北海道~琉球・小笠原 シベリア・東アジア
生育環境:岩上、岩壁、幹・枝、樹基部
赤褐色で光沢があり、樹幹や岩上から長く垂れ下がるか、または密着して生育します。比較的乾燥しやすいところにも現れます。 大きさは生育環境によって変化し、樹幹に着生するものは小さく、枝分かれが少ないようです。腹片(ふくへん)と呼ばれるお腹側(張り付いている内側)には円筒形の「袋」を持っていて、貯水槽の役割を果たしているといわれています。