長野県 北八ヶ岳連峰の標高2115メートルにたたずむ小さな湖「白駒の池」は、八ヶ岳火山溶岩流の窪地に水が溜まってできた湖です。
池周辺はコメツガやシラビソ、トウヒなど亜高山性針葉樹林の原生林が広がり、ごつごつした溶岩でできた林床には様々なコケが緑の絨毯のように敷きつめられています。岩の起伏や陥没して出来た木の根の空洞、横たわる倒木などが神秘的な風景を作っています。
八ヶ岳には国内に見られるコケの約4分の1の種類が自生しており、 2008年に日本蘚苔類学会より「日本の貴重な苔の森」として選定され、保護をされています。
緑の絨毯が広がる神秘的な苔の森でルーペと一緒にコケ観察をしてみませんか?
白駒の池はぐるりと一周、木道で散歩ができるように整備された小さな湖です。一周回るにには、大人の足で45分程ですが、コケを観察しながら散策する場合はもっとゆっくり時間をかけて周りましょう。
池の周りの木道からは何本か池からそれるコースがあり、そのコースの先には池の周りとは一味違う、苔の森が広がっています。この森を散策する場合は、一部登山ルートになっている部分がありますので、必ずトレッキングの装備でお出掛けください。
池周辺には麦草ヒュッテ、青苔荘、白駒荘という山荘があり、季節の食材を使った料理やデザートなどを楽しみながら一休みすることができます。
豊かな自然とコケの不思議にせまる観察会を苔の森開き(5月末頃~10月)の期間開催しています。苔学会の先生が優しく教えてくれるので、初めての方にもおすすめです。
麦草ヒュッテ、青苔荘ではシーズン中、予約制の「コケとの出会い観察ツアー」も随時開催しています。参加者2名以上であれば3日前の予約で、苔のスペシャリストに案内してもらえます。しかも、山荘のオリジナルのデザートまで味わえるお得なオプションツアーです。
宿泊とセットになった「コケと原生林体験ツアー」もあり、2日間、じっくりコケの世界を体験することのできるプランです。北八ヶ岳の苔の森のなりたちから、コケの不思議な生態を学んで、美しいコケの姿を堪能したい方におすすめです。
白駒の池の駐車場や山荘の売店では、可愛らしいキャラクターに出会うことができます。その名も「コケ丸」。触覚のように伸びる2つの胞子体。この特徴のある胞子体を持つ苔は、北八ヶ岳の苔の森を代表するコケです。
コケ丸グッズは北八ヶ岳の苔の森の山荘や駐車場の売店などで販売されています。ピンバッチやキーホルダーに手ぬぐい。コロコロしたグリーンの不思議なキャラクターに癒されます。森の中で、コケ丸のモデルになった本物のコケを探してみるのも楽しいですよ。
比較的大きな個体で、葉に横ジワがあり表情のあるムツデチョウチンゴケです。胞子体を複数つけるチョウチンゴケの種類です。腐葉土や倒木など養分の多いところを好みます。
北八ヶ岳のコケの森を代表する種で、日本の固有種でもあります。
コケ界のアイドル、タマゴケは名前の通り、さくの形が玉のように丸いところからその名が付いています。細かく繊細な葉はルーペで覗くと透けるような美しさ。。
さくは透明感のあるグリーンから成熟すると褐色に変わります。日陰の岩上や腐植土などの垂直な面にクッションのように固まった群落を作ります。
日当たりの良い岩の上に小さなマッチ棒のようなものが生えています。これはカムリゴケという地衣類でコケではありません。
岩にグレーの地衣体を広げ、マッチ棒のような2~3mmの小さな生殖器官が立ち上がるように生えます。
日当たりの良い岩の上に生息しているクロゴケ。乾燥に強く、小さな群落を作り、水分を吸収すると瞬く間に、その姿を変えます。
黒かったコケはみるみる水を吸って緑の葉を広げ、光合成を始めます。 水の入ったスプレーボトルとルーペを持って観察しましょう。
樹間に群生するカギカモジゴケ、カモジは髢(髪文字)の意味で、髪を結う際に自毛の足りないところに添える髪という意味です。そのカモジによく似ていることから付いた名前です。
カギカモジゴケは葉がクルクルと巻き毛のようになっていて、柔らかく弾力のある手触りです。葉先が真っ直ぐの似たコケはタカネカモジゴケという異なるコケです。
林床の腐植土や倒木の上に密生して生えるフジノマンネングサ。フサフサと羽状に枝を出し、繊細で美しいちいさな木の様なコケです。
一つの個体の茎から枝分かれした茎が地中を這って伸びて個体を増やしています。地中から出た新しい芽は落ち葉を突き破るほど、しっかりとした堅い茎が生えてきます。
北八ヶ岳のコケの森には、倒木が作った空洞の中に珍しいヒカリゴケを見つけることもできます。ヒカリゴケはその細胞が球体をしていて、弱い光を集めます。光合成をしようと葉緑体細胞の中を移動し光を受けるときに、反射するのでヒカリゴケはエメラルドグリーンのような色に反射します。
そのような珍しいコケに出会える北八ヶ岳コケの森。散策には、コケのスペシャリストに案内してもらうことをおすすめします。
北八ヶ岳のコケの森は窪地にあるので、朝日の差し込む午前中や昼、日が傾きかけた頃と時間帯によって、光と影が様々な表情をつくりだす森です。ゴロゴロと転がった岩にコケの絨毯を敷きつめた様な林床はこの北八ヶ岳ならではの風景。
ゆっくりとコケの森を歩き、時間の流れによって刻々と変わるコケの景色を存分に味わってみてはいかがでしょうか?
北八ヶ岳コケの森は八ヶ岳の山々に囲まれています。登山道のような少し険しい道や足場の悪い場所もあります。山道でも歩ける靴、汚れても良い動きやすい服装で散策しましょう。
北八ヶ岳のコケの群落は国内でも滅多にお目にかかれない規模。その壮大なコケの風景を広い視野で楽しみ、徐々に視野を小さくして、拡大していく楽しみ方がオススメです。小さなコケ達の姿を見ると、この大きな自然を形作るたくましさに心打たれます。
北八ヶ岳コケの森では、散策コースを外れないように観察しましょう。登山道周辺が一番コケの種類が豊富だからです。落ち葉がたまらず、地面がむき出しの場所や、岩や倒木が横たわるなど、多様な環境があるため苔の種類も豊富なのです。
北八ヶ岳コケの森の周りには山荘がいくつもあり、どの山荘もアットホームな雰囲気で、心がホッとするひとときを過ごせるスポットです。宿泊はもちろん、散策の途中に一休みしたり、地のもののお土産を買ったり、ワークショップなども楽しめます。あたたかく、気さくな人柄の山荘のご主人に地元の人ならではのコケの森を楽しむコツを教えてもらいましょう。
白駒の池のほとりにある青苔荘。原生林に囲まれた山小屋で、キャンプサイトもあるので、夏場はキャンプも楽しめます。
青苔荘
〒384-0701
長野県南佐久郡佐久穂町畑3220-46
TEL 0267-88-2082 FAX 0267-88-2078
衛星電話 090-1423-2725
ホームページ http://seitaisou.jp/
コケの森の散策中に少し小腹が空いたら、青苔荘のコケ丸のおにぎりや信州みその香ばしい焼きおにぎりで小腹を満たしましょう。具沢山のきのこ汁との愛称も抜群です!甘いものが食べたくなったら、可愛らしいコケ丸焼きもおすすめです。
お土産にピッタリの米粉を使ったクッキーのアソート。青苔荘のみで販売しているお菓子です。サクサク歯触りもよく、優しい甘さ。いろいろな種類を少しずつ楽しめるので、あっという間に平らげてしまいます。
そして、コケ丸印のキーホルダーは青苔荘のオリジナル。愛らしいコケ達の思い出にいかがでしょうか。
白駒の森を抜けて、湖の畔を右回りすると、白駒荘が見えてきます。白駒荘の自家農園で作る、野菜やとても珍しい食用ほおずきを食材にしたメニューがおすすめです。白駒の池を見渡せるテラスのような外のテーブルでいただくと疲れも吹き飛びます。
白駒荘
〒391-0301
長野県茅野市北山6581
TEL 0266-78-2029 FAX 0267-88-2681
ホームページ http://yachiho-montblanc.com
中でも、オススメは季節の山菜やお野菜を使った天ぷら。お蕎麦と合わせても、ご飯と合わせても美味しく召し上がれます。サクサクと軽い衣で一つ一つ風味の違う山菜の香りを楽しめます。
そして、ほおずきの実を使ったデザートと自家焙煎のコーヒーのデザートも他では味わえない美味しさ。甘酸っぱいほおずきのソースが引き立つチーズケーキはベイクタイプとレアタイプ。添えられたほおずきの実はジューシーで爽やかな味わいです。
赤い三角の屋根がトレードマークの麦草ヒュッテ。白駒の池からは散策がてら、白駒の奥庭・黒曜の森という散策コースを通って行くことができます。299号線沿いにあるので、車でのアクセスもよい場所です。
麦草ヒュッテ
〒391-0301
長野県茅野市北山 8241-1
TEL/FAX 0266-78-2231
http://www.mugikusa.com/
ヒュッテの周りには花畑が広がり、空が開けているので夜は星空も楽しむことができます。麦草ヒュッテでの宿泊は、ゆったりくつろげる個室もあり、女性どうしの宿泊にもおすすめです。
1階ではカフェのようにお茶を飲んだり、ケーキをいただくこともできます。手作りスイーツのコケモモのパウンドケーキはしっとり甘さも控えめでヘルシー。美味しい紅茶と一緒に頂いてみてはいかがでしょうか?
また、自分だけのコケのテラリウムが作れるワークショップもあります。 作り方と管理方法は麦草ヒュッテのご主人が丁寧に教えてくれます。北八ヶ岳のコケの森をきれいなガラスの器に再現して、思い出として持ち帰りましょう。