通常のペースではなく、努めてゆっくり歩いてみる。するとそれまで見えていなかった、コケをはじめとするたくさんの「小さなものたち」の存在に気づきます。 立ち止まり、しゃがみこんで目を近づけてみる。「上から目線」だけでは決してわからなかった、意外なデザイン性や愛らしさに驚かされます。思いがけない小さな発見。これがモスウォッチングの楽しみです。視点を意識的に変え、できるだけスローに歩く。それだけで風景が少し違ったものに見えてきます。触れてみるのもオススメです。乾いているときのコケは、ふわふわ・さらさら・つるつる。天然の高級カーペットといった感じです。では…濡れている時は?どうぞお楽しみあれ。
コケ観察で森や山に入る時は、長袖・長ズボンを着用しましょう。蜂対策には色の濃い服よりも白っぽい服がおすすめです。香水などの甘い香りは蜂や蚊などを寄せるので、つけないようにしてください。靴は歩きやすく、履きなれたものを使いましょう。雨上がりや水辺などは長靴もおすすめです。
簡易な拡大ツールであるルーペ(8倍から10倍がよい)を用いて向かいあってみると、コケのイメージが大きく変わります。ただし初めのうちは焦点(ピント)を合わせにくいのでちょっと戸惑います。観る対象にできるだけ近づく、あるいは対象を目の前に持ってきてしまうのがコツ。いずれもルーペを顔に密着させたまま「動かさない」ことが肝要です。
コケは基物にゆるく付着しているだけなので、そっと摘んで間近で観察しても、また元に戻しておけばOK。 なお、大変危険なのでルーペは絶対に太陽に向けてはなりません。コケを光に透かして観る際には、必ず太陽の位置を確かめて、そちらに背を向けるようにしましょう。
近年のコンパクトデジタルカメラ(コンデジ)やスマートフォンは接写機能に優れているので、手ブレとピント位置、露出補正の3点にさえ気づかえば、特にマクロレンズを使わなくても素敵なコケの写真が撮れます。またルーペをカメラのレンズに押し当てて撮るだけの簡単な拡大撮影はいまやコケガールの間では人気の裏技のひとつ。意外なほど綺麗にコケのクローズアップ写真が撮れます。
雨上がりのコケを指先で圧してみると、じゅわっと水があふれてきます。その保水力には目を瞠らされることでしょう。水をたっぷりと含んだコケは、全く別の植物のようです。姿もかたちも、まるで違います。晴天続きでコケが乾いているときには、小さな霧吹きで水を与えてあげるとよいでしょう。吸水性に長けたものは、見る見るうちに葉が開き、そのスピーディーな変化は感動します。濡れてもあまり変わらない種もありますが、水滴をまとった姿を光に透かしてみるとよいでしょう。美しく芸術的なコケのアートが楽しめます。
雪に閉ざされる季節はモス・ウォッチングに不向きなシーズンと思われがち。ですが、水しぶきのかかる場所に出現する、透明な氷塊に閉じ込められた「コケ氷」の美しさは言葉では言い表せないほど。冬季限定の芸術品です。冬の散策は積雪により、目線が少し高くなるので、岩壁や樹幹の高い位置のコケを観察しやすくなります。融雪期になると、樹皮と共に剥がれ落ちた各種のコケや地衣類が雪上に散らばり、その様子はコケの見本市さながらです。通常ではあまりお目にかかれない高木着生種の観察も期待できます。