ビクセン | 天体望遠鏡、双眼鏡を取り扱う総合光学機器メーカー
天体望遠鏡を初めて買うとき、何を基準にどんなものを選べばよいのか、迷いがあると思います。
そこで、天体望遠鏡を使いこなし、日々、その楽しさを満喫していらっしゃる各方面のベテランさんに
・初めて天体望遠鏡を買うときのアドバイス
・ご自分の初めての天体望遠鏡は?
・天体望遠鏡で星空を見る楽しさや魅力は?
など、インタビューをしてみました。
小野 智子 さん
ビクセン星空アドバイザー
国立天文台 広報専門員
望遠鏡は
・空にある天体に向けるもの
・屋外で使うもの
・天体に向けやすいもの
・外に持ち出しやすいもの
を前提に、ぜひ「使いたい」と思えるものを選んでください。
どんなに立派でも重くて運び出すのがたいへんな望遠鏡は、そのうち使うのが億劫になりそうです。
また、はじめのうちは向けたい天体に望遠鏡を向けられず、イライラしてしまうかもしれません。
せっかく星に近づくための望遠鏡を嫌いになってほしくないので、はじめは赤道儀よりも軽くて持ち運びしやすい経緯儀(経緯台)をおすすめします。
また、空に向けた望遠鏡から手を離してもその姿勢を保ってくれるフリーストップのものがよいでしょう。
使いこなせるようになってから赤道儀に買い換えるのが理想的です。
鏡筒はスペック(口径や倍率)にこだわりすぎず、大きすぎず長すぎず、組み立てる際に無理なく持てるものを選びましょう。おすすめは口径80mm程度の屈折望遠鏡です。
予算が許すなら、鏡筒に付属のアイピース(接眼レンズ)だけでなく、もう1-2個買い足すと楽しめる天体が増えると思います。
※フリーストップ…鏡筒を直接手で持って動かすことができ、手を離した位置で固定される仕組み。
小学校に入学する前くらい、5-6歳くらいだったと記憶しています。
星好きの兄がどこからか借りてきた小さな天体望遠鏡で、木星を見せてくれました。
木星のまわりをまわるガリレオ衛星を見たことをはっきり憶えていて、1時間か2時間後に再び望遠鏡をのぞいたときに、衛星の位置が変わっていたことがとても印象的でした。
高校1年生のときに貯めたおこづかいで買いました。
金額の半分近くは親が補助してくれました。
赤道儀 ⁄ 鏡筒はニュートン式反射、口径100mm(焦点距離1000mm)
極軸を合わせること、星雲などの暗い天体を導入するのが難しかったことを憶えています。
思えば、ファインダーを精度良く合わせずに使っていたかもしれません。
また鏡筒が(焦点距離が)長くて視野が狭く、天体の導入にははじめは苦労していました。
でもM57を導入できてその形がわかったときはとても嬉しかったです。
※ M57…こと座にある惑星状星雲。環[わ]の形をしていて「リング星雲」「ドーナツ星雲」などの名称でも親しまれています。
人間が持っている目ではとうてい見ることができない遠くの天体の存在が分かる、かすかな光が分かるということ。
空に見えていてもそこに近づけない天体(月など)の姿が、まるでその上空を飛んでいるかのようにつぶさに見られること。
感激以外の何ものでもありません。
佐々木 夏 さん
天文ガイド 編集長
月刊「天文ガイド」
「自分でセッティング&操作ができそう」と思える望遠鏡を選ぶのはいかがでしょうか?
せっかくの自分の望遠鏡なのに、とても手間がかかる、操作がよくわからなくて持ち出さなくなってしまった…となってしまったら宝の持ち腐れです。
でも、初めて購入するときに、購入後のことを想定するのはなかなか難しいもの。
であれば「自分で操作できそう」という感覚を頼りに、選んでみるのもよいでのはないかと思います。
もし望遠鏡販売店に行くことができるなら、あるいは詳しい知人の方がいたら、「自分の感覚」だけではなく、詳しい説明やアドバイスを積極的にもらって、一緒に検討・購入ができると、さらによいですね。
小学校1年のときの部分日食(おそらく1981年7月31日の日食@地元の埼玉)。
近所に天文ファンのお兄さんがいて、よく望遠鏡で月や惑星を見せてもらっていたのですが、昼間、太陽が欠ける「日食」という現象を見せてもらい、非常に印象に残りました。
観察中に、うっかり私がノーフィルター状態の接眼部をのぞきそうになってしまい、天文ファンのお兄さんからものすごく怒られたことも記憶に残っています。
※ 日食の観察は、天体望遠鏡に太陽観察専用の器具を装着した状態で行います。夜空の星を観察するときと同じ方法で行うと、目に重大な怪我をすることがあります。
社会人になってからです。
カメラなど他の趣味もあって望遠鏡まで手がまわらなかったこともありますが、それまで、どちらかというと星空の写真撮影への興味の方が勝っていた、という理由もあります。
中古の経緯台 ⁄ 鏡筒はACF光学系(シュミットンセグレン式) 、口径203mm ⁄ 自動導入・自動追尾を知人から譲ってもらったのですが、当時は家族が所有する車しかなく、100%自由に遠征できる環境になかったので、稼働率が低くなってしまいました。
どうせ望遠鏡を入手するなら、もう少し手軽な望遠鏡を入手してもよかったかな…。
初めて自身の望遠鏡で「自動導入」という機能を試せることに非常にワクワクしました。
しかし、そもそも重量が重く、セッティングに時間がかかったことも大変でしたが、英語表記のコントローラーでの操作に非常に苦労しました。
が、目的の天体を導入できたときは本当にうれしかったです。
いま宇宙にある天体を生で見ている、という実感が得られること、に尽きます。
ですので、私の場合、望遠鏡で星空を見る魅力は「眼視」だと思っています。
最近流行っている「電視観望」は、そうした生で見る感動を、多くの人と共有できるので、非常に魅力的で、今後の発展も楽しみです。
※ 眼視…天体望遠鏡の接眼レンズを自分の目でのぞいて観察すること。
※ 電子観望…カメラで撮影した天体をモニターで見たりする方法。
構造がシンプルで直感的に操作できる機種。
鏡筒の横からのぞくことになるニュートン反射式や鏡筒が太短いカセグレン系反射より、望遠鏡がどこを向いているのか直感的に判りやすい屈折系が望ましい。
架台も上下左右に動く経緯台の方が、斜めの軸を持つ赤道儀より直感的に操作しやすい。
その点、構造も操作もシンプルなポルタ系の屈折経緯台が初めての望遠鏡としておすすめ。
電動駆動や、コンピュータ内蔵、スマホ連動機能などは、望遠鏡を操作する面白さを体得した上で、より口径の大きな2台目の望遠鏡の候補とするのが良いと思う。
(たぶん)10歳=小学4年生。
小遣いを貯めて、組み立て望遠鏡キット(たしか、口径80mm 100倍)を購入して半自作。月や惑星を見たが、ぼやけてよく見えなかった。
(本格的な望遠鏡としては)19歳
10歳の時の組み立て望遠鏡キット(口径80mm 100倍)で難しかったのは、木製の架台が弱く微動もなかったので、月や惑星を導入するのもうまくできなかったこと。
今にして思えば、倍率が高く視野が狭かったにもかかわらず、ファインダーも付いていなかったからで、倍率の高さだけで選んではいけないという見本のような初望遠鏡でした。
「生で見る宇宙」の姿です。
写真やCGなら、いくらでも美しく刺激的な画像や動画を見ることができますが、自分で望遠鏡を操作して自分の目で宇宙からの生の光をとらえるという「体感的経験」に勝るものはありません。
伊藤 うらら さん
宙ガールドットコム編集長・星空イベントプランナー
宙ガールドットコム
・操作や組み立てがシンプルであること
・自宅に置いて、邪魔にならないサイズ
最初は「気軽に取り出して使える」ことを優先して欲しいなと思います。
ですので、経緯台で少々コンパクトなタイプで十分だと思っています。(ビクセンさんの機種ならどれでも土星や木星がキレイに見えるので)
小学5年生です。
両親に誕生日プレゼントで買ってもらった望遠鏡で、お庭から月を見ました。
ですが、うまくピントが合わせられずボヤけてしまいました。
それでも月がとても眩しかったのを覚えています。
小学5年生。
ビクセンの経緯台 ⁄ 鏡筒は屈折式、口径60mmを買ってもらいました。(いまだにメインで使用しています)
ピント合わせが「これでいいのか?」と、正解が分からなかったので何となくで見ていました。
当時はインターネットもなく、教えてくれる大人もいなかったため、分からないことが分からないままで終わってしまったなあと思います。
私は天体望遠鏡を「宇宙船の窓」だと思ってのぞいています。
望遠鏡は「拡大するもの」ではなく「近づいて見ることができるもの」だと思うからです。
宇宙船に乗って宇宙を旅し、近づいてきた天体を窓から見る…そんなイマジネーションを大切にしています。
広大な宇宙にぽつりと浮かぶような土星や木星を見ると特に「近くに来られた」と感じるので大好きです。
中西 アキオ さん
天体写真家
有限会社ナカニシイメージラボ
主な著書
メシエ天体 & NGC天体ビジュアルガイド(誠文堂新光社)
天体写真撮影テクニック 星景写真撮影術[改訂版](アストロアーツ)
天体写真撮影テクニック 都市星景撮影術(アストロアーツ)
ほか多数
非常に難しい質問ですが、天体写真家の観点から、天体は眺めるだけでなくぜひ写真撮影にも挑んでほしいと思っています。そうした場合、まず数万円程度の天体望遠鏡は、快適に天体を眺めたり撮ったりするにはほど遠いためにやめたほうがいいです。
光学性能の良い双眼鏡やフィールドスコープのほうがずっといいでしょう。
最低でも20万円程度の予算を見込まないと、『天体が良く見えて』『撮って』『楽しむ』ということは難しいと思います。
ビクセンのSTAR BOOK TENのついた赤道儀と、SDレンズ採用の80~100mm屈折望遠鏡を組み合わせがお勧めですが、それでは高すぎるということになると思いますので、2歩譲って、赤道儀ではなく経緯台のPORTAにすれば軽くなって極軸合わせも不要、扱いは楽になりますが天体の追尾は大変になります。
撮ることによって、天体望遠鏡は2倍あるいはそれ以上に楽しむことができるでしょう。
※「STAR BOOK TEN」付属の天体望遠鏡…SXD2シリーズ、SXP2シリーズ、AXJシリーズ、AXD2シリーズ
中学一年の時です。
学校の理科クラブに所属していた友人が、学校の望遠鏡を借りたので一緒に見ました。
高校一年の時です。
重いために観測場所までの移動、そして組み立て。
赤動儀の極軸合わせと、上下左右ではない赤道儀の動きが難解。
次に天体の導入で楽に見える月や惑星はいいですが、ちょっと暗い天体になると視野への導入が大変。
図鑑や教科書に載っている天体がリアルに見えること。
そしてカメラを接続すれば、眼では見えない天体を写せること。
降るような星空のもとで『宇宙』を実感できること。
吉田 偉峰 さん
ビクセン星空アドバイザー
一戸町観光天文台 台長
一戸町観光天文台
普段の生活の中で使うことをイメージして、気楽に取り扱える望遠鏡を選ぶとよいです。
運搬・組立・使用・撤去が難なく行える機材を選ぶと、使用機会が増えて上達しやすくなります。
収納しておくスペースも考えておく必要があります。
手に余るサイズや重量級の機材を選んでしまうと、物置から出すことすら億劫になる場合も…。
星空の知識や望遠鏡の取扱いスキルは使いながら身に付けていくこともできるので、日常生活のサイズ感に合う機材を選ぶことがポイントです。
10歳頃です。
実家にあったVixen製オリオンミニを測量用三脚に取り付けて、部屋の窓から天体観察をしていました。
何気なく向けた方向に土星や木星を偶然見つけることもあり、夜空には面白いものがたくさんあると思いました。
22歳のときです。
VixenのSXC-A80SS(赤道儀 ⁄ 鏡筒は屈折式、口径80mm ⁄ 自動導入)
短焦点の鏡筒と低倍率での視野を求めた為、収差などの光学性能は無視しました。
自動導入が魅力的で、最終的な決め手となりました。
現在も愛用中。
オリオンミニをいじっていた小学生当時は、微動雲台で少しずつ視野を移動しながら星空散策を楽しんでいました。
目的の天体がなかったので、特段不便はなかったです。
SXC-A80SS購入時は自動導入などの新しい機能や各部の操作方法に慣れる必要がありましたが、高校天文部時代にGP赤道儀シリーズ(Vixen)で慣らしていた為苦労はありませんでした。
望遠鏡に触れる時間は、とにかく楽しんでいたことしか記憶にないです。
見上げただけではわからない、星々の微細な表情が見られること。
日常にはない光景に触れられること。
機材そのものにも魅力がある。